大阪大学医学部の学園祭は、かつて医学部が中之島にあった頃から「中之島祭」として親しまれてきた長い歴史を持つ行事です。平成の代になり、医学部、医学部付属病院が吹田に移った後も「中之島祭」の名称を守りながら、学生が主体で毎年開催されてきました。私が学生時代はまだ中之島で学園祭が開催されており、今ほどは洗練されたものではなかったと思いますが、それでも、学生時代の想い出の中に今でも中之島祭の記憶は大切な思い出として刻印されています。

 ところが、コロナ禍の中、昨年、一昨年と2年間中ノ島祭りの開催は中止となり、今回の学園祭は、中之島祭を一年生の時に知った世代と、全く知らない世代が力を合わせての開催となります。今年に入っても、第6波、第7波と、今もコロナとの戦いは続いておりますが、医学部生たちは阪大医学部生である自覚と責任の下、自分たちでしっかり話し合った上での指針をもとに、責任をもって伝統ある学園祭を開催するための準備をしてまいりました。

 このような背景の下、学生たちが掲げた今年度の中之島祭のテーマは「克」です。「克」という文字には、力を尽くして勝ち抜く、耐え抜く、やり抜くという意味があり、彼らがこの学園祭の中で掲げている二つの目標があると聞いています。一つ目は、感染対策を十分に行った上でこの状況に打ち勝(克)ち、3年ぶりの学園祭を実現させ、人と人との繋がりを作り上げるきっかけを作ること。二つ目は、その活動、準備の中で、自身を成長させ自分に打ち勝(克)つことができる機会を与えられる学園祭を目指すということだそうです。

 長い歴史を持つ伝統の行事である中之島祭を、学年を超えて協力し責任をもって準備実行する中で、今後の医師、医学者としての人生において重要な学びの場となることを期待しています。

熊ノ郷 淳 先生